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2023.07.20

人を大切にする企業づくり

職場におけるハラスメントとは?<定義と種類>

令和2年6月、「職場におけるハラスメント防止措置」が事業主の義務となりました。

その当時、努力義務とされていた中小企業においても令和4年4月から適用され、現在は全ての企業において「職場におけるハラスメント防止措置」が義務づけられています。

それとともに、労働者自身もハラスメントへの意識関心が数年前に比べ格段に高まっているという現状にあります。

このような中で、ハラスメント対策を行うにあたって、どのようなハラスメントが職場で起こり得るのかを知っておくことは非常に有効かつ重要です。

ハラスメントの種類は多岐にわたるため、ここでは代表的なものに限られてしまいますが、企業でのハラスメント対策で最低限押さえて頂きたいハラスメントをここで書かせていただきたいと思います。

 

ハラスメントの考え方

  • 職場とは

職場のハラスメント対策を行うにあたって、まず理解しておきたいのが「職場」の範囲。

ハラスメントにおける「職場」とは、労働者が通常業務を遂行するために勤務している場所はもちろん、それ以外にも労働者が業務を遂行する場所、職務の延長と考えられる場であれば「職場」に含まれます。具体的には、職務との関連性や参加者、参加が強制か否かによって個別に判断されることになりますが、勤務時間外の懇親の場、出張先や移動中、通勤中などでも「職場」に該当することもあるというのを知っておく必要があります。


  • ハラスメントとは

ハラスメントは、日本語に直訳すると「嫌がらせ」「いじめ」を指します。広義には「人権侵害」を意味し、言葉や行動によって相手に不快感を与えたり、不利益を与え、その尊厳を傷つけることをいいます。

ここからわかることは「ハラスメントのつもりはなかった」とは「いじめているつもりはなかった」ともいえる、ということではないでしょうか。「ハラスメント」を「いじめ」と同じ意味であると捉えると分かりやすいかもしれません。

 

職場で起こりえるハラスメントの種類

  • パワーハラスメント(パワハラ)

パワーハラスメントについては、厚生労働省で下記のように定義がなされています。

 

職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる

①優越的な関係を背景とした言動であって、

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、

③労働者の就業環境が害されるものであり、

①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます

 

なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない、と表記されています。

ここで、よくある例としては上司から部下に対するパワーハラスメントが想像できますが、①優越的な関係を背景とした、というものは上司から部下に限定されないということもハラスメント対策では全従業員に周知しておきたいところではないでしょうか。部下が集団となり、上司が抵抗や拒絶することが困難になった場合に、集団となった部下が優越的な立場であるとされることもあり得るということです。

②の「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動についての判断には、様々な要素が総合的に考慮されることが適当とされています。具体的には、その言動の目的、言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度、それらの経緯・状況・頻度・継続性、労働者と行為者の関係性、労働者の心身の状況などが該当します。

3つ目の「就業環境が害される」という点について、それらの言動により労働者が身体的、精神的に苦痛を感じ、就業環境が不快となったことで能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、見過ごすことのできない程度の支障が生じることを指す、とされています。

これらは、受け取り側の性格や考え方によって大きく左右されるものになりますが、ここでは「平均的な労働者の感じ方」というものを基準とすることが適当とされています。

平均的な感覚とは一体、、、と感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。


  • セクシュアルハラスメント(セクハラ)

それでは次に、セクハラについてです。

パワハラ同様にセクシュアルハラスメントについても、定義がございます。

 

「職場」において行われる「労働者」の意に反する「性的な言動」により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されること。

 

「性的な言動」のうち、発言については、具体的に性的な事実関係を尋ねたり、性的な内容の噂を流したり、性的なジョークやからかい、食事やデートへの執拗な誘い、というものが該当します。また、行動の具定例としては、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触れること、わいせつな写真などを配布したり掲示したりすることが挙げられます。

セクハラは男性から女性にされるものが多いという印象がありますが、異性に対するものだけでなく、同性に対する性的な言動もセクハラに該当するという点が最近では広く認識されるようになってきていると感じます。


  • マタニティハラスメント(マタハラ)、パタニティハラスメント(パタハラ)、ケアハラスメント(ケアハラ)

マタハラ、パタハラ、ケアハラについて関連するものとして、厚生労働省では「妊娠・出産・育児休業等ハラスメント」の定義がなされています。

 

「職場」において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業、介護休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業・介護休業等を申出・取得した「男女労働者」の就業環境が害されること。

 

上記のうち、妊娠・出産・育児をする女性に対するハラスメントを「マタハラ」、育児をする男性に対するハラスメントを「パタハラ」、介護を行う人に対するハラスメントを「ケアハラ」と呼ぶことがあります。

妊娠・出産したこと、育児や介護のための制度を利用したこと等を理由として、事業主が行う解雇、減給、降格、不利益な配置転換、契約を更新しないといった不利益な取り扱いをする行為は、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法により禁止されているということはご存知の方も多いのではないでしょうか。

一方、これらに気を配るがあまり、業務上必要な言動でさえ難しくなっている、というお声をお聞きすることがあります。

ここでは、労働者の意向について、気を配る必要があるというのが大きなポイントです。一方的に通告することはハラスメントに該当する可能性がある、ということになるのですが、反対に過剰に気を遣いすぎることが必要というわけではないのです。このことから、バランスの良いコミュニケーションが大いに必要とされる問題であると感じられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。


  • その他のハラスメント

ここまで述べてきたハラスメントは厚生労働省の明るい職場応援団で定義が公開されているものになりますが、それ以外にも職場では様々なハラスメントが起こり得ます。

個人的には、なんでも○○ハラスメントと言ってしまうのはどうかな、と思うところもあり、、、とはいえ、ハラスメントの種類を知っておくことはハラスメント対策をする上で有用な知識になりますのでご参考としていくつか以下に記載させていただきます。

 

モラルハラスメント(モラハラ)

言動によって相手を支配したり、尊厳を傷つけるなど精神的に追い込む行為のこと

 

アルコールハラスメント(アルハラ)

アルコールの席に執拗に誘ったり、アルコールを飲むことを強要すること

 

カラオケハラスメント(カラハラ)

カラオケに執拗に誘ったり、無理やり歌わせようとすること

 

カスタマーハラスメント(カスハラ)

顧客や取引先などが企業に対して、理不尽なクレームや言いがかりをつけること

 

就活終われハラスメント(オワハラ)

他社の内定や選考の辞退を強要し、本人の意思とは関係なく就活を終わらせようとすること

 

ハラスメントハラスメント(ハラハラ)

ハラスメントではないこともハラスメントだと過剰に主張すること(自分を正当化し、他人の指導や注意を妨害する行為)

 

これらをハラスメントと言えるかどうかは、その状況や相手との関係性、程度や頻度などによって大きく左右されます。一般の平均的な感覚というものが問われるというところが、ハラスメント対策を難しいと感じるポイントなのかのしれませんね。

 

ハラスメントを予防するために

  • 事業主が講ずべき措置

事業主の義務となっている「職場におけるハラスメント防止措置」については以下の事項が厚生労働大臣の指針として必ず講じなければならないものとして定められています。

 

・事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

・相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

・職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

・併せて講ずべき措置 (プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)

※ このほか、マタハラ、パタハラ、ケアハラについては、その原因や背景となる要因を解消するための措置が含まれます。

 

上記以外にも職場におけるハラスメントの防止のための望ましい取組というものがありますので、あわせて取り組まれることをお勧めします。

 

・各種ハラスメントの一元的な相談体制の整備

・職場におけるハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための取組

・労働者や労働組合等の参画

 

具体的な取り組みについては厚生労働省発行のパンフレットにも記載されていますので、ご参考にURLを記載させていただきます。(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/pdf/pawahara_gimu.pdf


  • 社内コミュニケーション活性化

ハラスメントの定義や種類、事業主の義務について、ハラスメントとコミュニケーションは密接に関係しあっているということを改めて感じていただきたいという想いでここまで書かせていただきましたがいかがでしたでしょうか。

実際にハラスメントが起きてしまうシーンでは、コミュニケーションに問題があることが多いです。(むしろ、ハラスメントはコミュニケーションの問題であると言い切ってしまっても過言ではないのでは!?と思うことが多々あります)

ハラスメント問題に関して、ハラスメントを起こさない対策をするというと少しネガティブな表現になってしまいますが、ハラスメント対策≒コミュニケーション向上施策と考えていただくといかがでしょう。

ホイップ社労士事務所では、法的な観点からハラスメント対策をお伝えするのはもちろん、それ以外にも今まで心理学を通して学んだ知見を活かし、「ハラスメント対策から考えるコミュニケーション」について、お伝えすることが可能です。

そこには、異なる価値観を認め合う、アサーティブスキル、アンガーマネジメントなど人間関係向上につながるテーマを含んでいます。

受講いただいた方のお声の中には、

「価値観ワークを通して、自分が当たり前と思っていることが他人にとって当たり前ではないということを改めて認識できた」

「他人の価値観に触れることで新たな気づきがあって良かった」

というようなことを言ってくださる方も多くいらっしゃいます。

ハラスメント対策と人間関係、切っても切れない関係だと思いませんか。

 

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます。

ハラスメント対策は言い換えるとコミュニケーション力向上施策です。

日頃からハラスメントをしない、そしてハラスメントだと受け取られないような人間関係作りを人事施策として進めてみてはいかがでしょうか。

それはきっと活き活きとした職場づくり、ひいては企業の発展に繋がっていくことだろうと思っています。

 

<参照>明るい職場応援団(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/